「ドリルを売るなら穴を売れ」の意味するところ

「ドリルを売るなら穴を売れ」という本をご存じでしょうか?

このタイトルを見た時、「穴を売る?いったいどういうこと?」それが私の第一印象でした。
でもその意図を知って、これが実にうまいタイトルだとつくづく感心したのです。
そのワケは…

ドリルを買いに来たお客さん。買うのはもちろんドリル。
でも、彼が本当に欲しいものは「ドリル」ではないのです。
これは、なぞかけでも何でもありません。

彼が本当に欲しいものは「穴」。
そう、ドリルを使って開ける「穴」なんです。

つまり、
お客さんが欲しいものは商品ではなく、その商品を手に入れることで得られる価値である、ということ。

私がセサミンを買うのは、あの黄色い透明の錠剤が欲しいからではなく、健康でイキイキと過ごす自分の体が欲しいから。
私がスタバでコーヒーを買うのは、コーヒーが飲みたいだけではなく、お店の雰囲気やそこで過ごす時間を楽しみたいから。
本当に欲しい価値は、商品とは別のところにあるというわけです。

実はこの本、マーケティングを学ぶ人の入門書として有名です。

ビジネスを始めると、だれしも自分の商品を売ろうと必死になります。当たり前ですよね。
でも、「お客さんが本当に欲しがっている価値」(これを「ベネフィット」と呼びます)が何なのかを考えることを意識しなければ、的外れなプロモーションになってしまう可能性があるのです。

お客さんにとってのベネフィットについて考える

お客さんが手にいれるベネフィットの中には、直接的な価値にプラスして、それを手に入れるための労力や時間も含まれています。

心のゆたかさを求めて本を買う時、その本を駅前の本屋さんまで買いに行くのか、ネットで発注するのか。

駅前の本屋のおじさんとの楽しい会話を自分のベネフィットと考えると本屋さんまで足を運ぶでしょう。
でも、時間や手間をかけたくない人は、ネット発注するでしょう。

後者の人が多くなることで、私の町の古い本屋さんは潰れてしまいました。そのニュースを聞いた時、学生時代によく本を買いに行ったことを思い出して寂しい気がしましたが、自分自身が、ネットで本を買うようになってしまっていることに気づいたのです。

ここで考えたいのは、お客さんのベネフィットが、お客さんの年代、性別、居住地などの個人的素養や時代背景、競合などによっても大きく変わるということです。

年代や性別によってライフスタイルは変わります。年配の人は、ネット注文が苦手な傾向があるでしょうし、若者はあらゆることをスマホで完結させる傾向があるのではないでしょうか。

独身か既婚者か、子どもがいるかいないか、どこに住んでいるか、などによっても行動範囲や価値観が変わります。
同じ30歳の女性でも、独身の人と既婚で子供がいる人では、自由になるお金と時間には差があるでしょうし、都心に住む人と僻地に住む人では条件が変わってくるのはあきらかです。

マーケティングを考える時、自分のターゲットとするお客さんを想定し、そのターゲットにとって、何がベネフィットになるかをしっかりと見極める必要があるということがわかりますね。

ベネフィットは人間の欲求がベース

突然ですが、あなたには、どんな欲求(欲望)がありますか?

  • 美味しいものが食べたい
  • 休みが欲しい
  • モテたい
  • 痩せたい
  • 若返りたい
  • 出世したい
  • お金が欲しい
  • 認められたい
  • 褒められたい
  • 自立したい
  • 成長したい

思いつくまま書き出してみました。(私の欲求なのか…?)
いくつかの項目に「うんうん」と頷いた人もいることでしょう。

人間の欲求の分類については諸説ありますが、有名なものはマズローの5段階欲求と呼ばれるものです。

後に、アルダーファ氏がこれを3つに集約し提唱したのがERG理論で、マーケティングを考える時には、こちらの方がわかりやすいかもしれません。

・生存欲求(Existence):物質的・生理的満足への欲求
・関係欲求(Relatedness):良好な人間関係への欲求
・成長欲求(Growth):自尊・自己実現への欲求


ベネフィットの源になっているのはこれらの人間の欲求(欲望)です。
欲求の種類や深さは、人それぞれによって差異はありますが、人はこれらの欲求を満たすベネフィットを求め、それに納得できることによって、対価を支払うのです。

ちなみに、ご紹介したこの本では、
「ベネフィット」
「セグメンテーションとターゲット」
「差別化」
「4P」
というマーケティングの基本要素について書かれています。
これらについては、また改めて書いてみたいな、と思っています。

   

ホームページ作成やランディングページ作成を行う時、ともすれば、商品を売り込むことばかり考えてしまいがちですが、このように「ターゲットは誰なのか」「ターゲットの欲しいものは何なのか」を見極めること、そして何より「自分がお客さんであればどうなのか」という観点を忘れないように心がけています。

この記事を書いた人

中道 尚美[ライター]
株式会社 まころ企画

子どもの手が離れ、人生後半戦に入ってから「やりたいことを仕事にしたい!」と今の業界に転身しました。文章を読むのも書くのも好きで、美味しいものが好きで、人のつながりが好き。「面白いことを言わなくなったらクビ」そんな我社のモットーのもと、時代の流れに鈍感になることなく、自分磨きは忘れずに、しなやかに仕事を楽しみたいと思っています。