ダイエットをしている時、ケーキを食べない方が合理的。
わかっているけど、美味しそうなケーキを見たら食べてしまう。
明日テストがあるなら、勉強するのが合理的。
それなのに、録画していた映画をついつい見てしまう。
心当たりがあるのは、私だけではないでしょう。
私たちは、何かの行動を起こすとき、その背景には必ず、感情、経験値、こだわり、思いなどが存在します。そして、意思決定をする時、必ずしも合理的であるとは限りません。
従来の「経済学」は、人が合理的判断をすることを前提にしていますが、ホントのところ、人の心は合理的にはいかないもの。そこで、人のありのままの姿に焦点をあて、人々の行動心理から経済活動を考える「行動経済学」という学問がうまれて注目されています。
つまり、人の心は「経済」にも影響するのです。
人の心は合理的にはいかないという事実からスタート
「行動経済学」のベースになっている「行動心理学」は、意思決定や行動のプロセスと心理状態の因果関係を客観的に分析した心理学の一つで、アメリカの心理学者ジョン・ワトソンが提唱しました。
じつは、マーケティングにおいて、この行動心理学が活用されている事例がたくさんあります。
私たちが、ホームページ作成やランディングページ作成をする際に使うセールスライティングでも取り入れているものです。
セールスライティングとマーケティングと心理学。
一見関係のないように思えるこれらには、とても面白い関係があるのです。
そこで、マーケティングに役立つ行動心理を5つセレクトしてご紹介します。
(ホントはもっといっぱいあるので、それについてはまたの機会に)
プロスペクト理論
まずはあなたに質問です。
次の状況ならどちらを選びますか?
[A]必ず9万円もらえる
[B]90%の確立で10万円がもらえるが、10%の確率で何ももらえない
[A]確実に9万円を失う
[B]90%の確率で10万円を失うが、10%の確率で何も失わない
いかがでしたか?
私は、質問1では[A]を選び、質問2では[B]を選びました。
そして多くの人が同じように、質問1で[A]、質問2で[B]を選ぶのだそうです。
この結果からわかることは、
人は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクを回避し、
一方で、損失を目の前にすると、損失そのものを回避する、ということです。
とにかく人は、損をしたくないんですね。これが「プロスペクト理論」です。
プロスペクト理論とは
「人は得をするよりも損をしたくないという気持ちの方が強い」ということ、そしてそれは、人の「損失回避性」に基づいているという理論です。
1979年、心理学者のダニエル・カールマンとエイモスとベルスキーが共同提唱したもので、行動経済学の発展に大きく貢献した理論です。
価値関数グラフは、縦軸が「心理的価値のプラスとマイナス」、横軸が「利益や損失の金額」を表しています。同じ金額でも、利益で得られるプラスの心理的価値A(嬉しい)よりも損失で失うマイナスの心理的価値B(悲しい)の方が大きくなっています。
「人は利益よりも損失のほうが2倍程度強く感じる」ということがわかります。
マーケテイングで活用される例
「期間限定」
「特別価格」
「返金保証」
■■先日、堺市で有名なフルーツ大福のお店で「期間限定商品」と書かれたキウィ大福が目に留まりました。「次に来た時には、もうないかもしれない。今、食べなくちゃ損しちゃう!」そう感じて買ってしまった私は(しかもダイエット中にもかかわらず)、しっかりプロスペクトルの罠にはまってたのです。(単なる言い訳)
返報性の原理
誕生日にプレゼントをもらうと、相手の誕生日にもお返をしたくなる。
旅行でお土産をもらうと、自分が旅行に行った時にも、お土産を買わなくちゃ、と思う。
店員さんがとても感じがよかったので、つい買ってしまった。
こんな経験はありませんか?
返報性の原理とは、
「人は何かしてをしてもらうと、相手に何かを返そうと思う」という行動心理の原理です。
社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニが提唱したもので、日常生活でも身近に経験することが多いと思います。
「返報性の原理」には大きく分けると4種類の原理があるといわれていますが、ビジネスで利用されるのは好意の返報性が多いでしょう。
・悪意の返報性:悪意を受けると攻撃をしたくなる
・譲歩の返報性:譲歩すると譲歩してくれる
・自己開示の返報性:オープンに接するとオープンになってくれる
マーケテイングで活用される例
「無料体験」
「ノベルティ」
「サンプル提供」
「丁寧なカスタマーサービス」
■■テレビを見ていたら、イキイキした女性が映し出された後「1か月分無料でお試し」とコマーシャル。そう、セサミンです。「無料なら試してみようかな」とフリーコールに電話をして1本ゲットし飲み始めてみました。結果、すでに3年飲み続けています…。コレには、他にも心理の法則があるのです
ザイオンス効果
アメリカの心理学者が行ったこんな実験があります。
②見せる回数は、写真によって1~25回とばらつきを持たせる
③最後に12枚の顔写真を全部並べて、被験者に印象の良かった人を選ばせる
どんな結果になったと思いますか?
予想できた人もいるかも知れませんが、見た回数の多かった人ほど印象がよいとこたえる傾向があったのです。
はじめて会った時にになんとも思わなかった人でも、顔をあわせる機会が増えることで気になっていくということがあるものです。
ザイオンス効果とは、
「接触機会が多くなると好感を持つようになっていく」ということです。
1968年、アメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが発表した論文に基づいており、その名前が命名されました。
「単純接触効果」や「熟知性の原則」とも言われます。
マーケテイングで活用される例
「リターゲティング広告」
「SNSフォロワー」
「ステップメール」
■■なにかを検索すると、それに関連する広告が表示される「リターゲティング広告」(通称リタゲ)。私は仕事で婚活サイトのリサーチをしていた時、婚活や出会いサイトのリタゲが多く出ていました。銀行に所要があり、説明をするためにタブレットを使って話した時、このリタゲがたくさん表示され、心の中で「ちがうのよ。別に出会いを求めているわけじゃないのよ」とひそかに言い訳した苦い経験があります。
アンカリング効果
・「ピザ」と10回唱えさせてから、膝を指さして「ここは何?」と聞かれて「ピザ!」と答えてしまった
・「通常5,000円のところ、今だけ50%オフの2,500円!」と聞いて思わず買ってしまった
そんな経験ありませんか?
アンカリング効果とは、
「最初に与えられた印象が、意思決定に影響を与える」ことです。
プロスペクト理論を提唱した心理学者のダニエル・カールマンとエイモスとベルスキーの論文で発表されたもので、船が錨(アンカー)を下すことで固定されることから命名され、錨のように心をコントロールすることから名付けられたと言われています。
ピザのゲームの事例では「ピザ」、セール価格の事例では「通常5,000円」がアンカーとなっています。
最初にインプットされた情報がアンカーとなって、その後の判断に大きな影響を与えるのです。
マーケテイングで活用される例
「特別価格」
「シーズンSALE」
「希望小売価格」
■■会員登録している通販サイトからSALEの通知。開いてみると、シーズン中にチェックしていたジャケットが半額に!30,000円の定価では手が出なかったけれど、半額の15,000円なら、とってもオトク♪と、財布と相談する前にポチってしまった私。でも、よく考えてみると、最初から15,000円だったら、買ってたかどうかはちょっと疑問。ああ、今月も金欠。
バンドワゴン効果
・ラーメン屋さんの前に行列があると、並ぶ人がどんどん増えいく。
・「ベルトセラー」と書かれて陳列されているとその本は飛ぶように売れる。
・人気のあるレストランは、どんどん予約が取れなくなる。
バンドワゴン効果とは、
「多くの人が支持しているものを良いと感じて、さらに支持者が増える」効果のことです。
世間の流行りや評判で判断をしてしまう心理のことで、「みんなが買ってるから欲しくなる」という群集心理、「世の中あるある」ですね。
人は、勝ち馬に乗りたがるのです。
バンドワゴン効果は、1950年、アメリカの経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタインが、提唱した行動経済学の心理効果です。
ディズニーランドがいつもいっぱいなのも、バンドワゴン効果によるものといえます。
マーケテイングで活用される例
「口コミランキング1位」
「話題の商品」
「売上ナンバーワン」
「行列のできる店」
■■デパ地下を歩いていると、何やら行列ができている。なんの行列かを確かめると、Instagramで評判になっていた食パン専門店のポップアップストア。友達からも美味しいと聞いていたし、一度食べたかった食パン。もちろん並びました。買いました。そしてSNSで発信しました。こうやってブームができるのね。
なかなか合理的にはいかない自分を振り返りながらも、「人は合理的にはいかないものさ」と納得して美味しいものを食べながら仕事に励む私でした。
この記事を書いた人
中道 尚美[ライター]
株式会社 まころ企画
子どもの手が離れ、人生後半戦に入ってから「やりたいことを仕事にしたい!」と今の業界に転身しました。文章を読むのも書くのも好きで、美味しいものが好きで、人のつながりが好き。「面白いことを言わなくなったらクビ」そんな我社のモットーのもと、時代の流れに鈍感になることなく、自分磨きは忘れずに、しなやかに仕事を楽しみたいと思っています。